2017-01-11

「2017年宗教改革500年 カトリックとルーテルの共同声明」に学ぶ ⑸

〈本文から〉
●キリストにあってひとつ
 この喜びの時に、わたしたちは、世界のキリスト教諸教会や交わりを代表してここに同席し、わたしたちと祈りを共にしている、わたしたちの兄弟姉妹にわたしたちの感謝を申し上げます。争いから交わりへ進もうと取り組むに当たって、わたしたちは洗礼によってそこに加えられている、キリストのひとつのからだの一部分としてそうしているのです。わたしたちはわたしたちの努力を思い起こさせ、また、わたしたちを励ましてくださるよう、エキュメニカルな同志にお願いします。わたしたちはこの同志に、わたしたちのために祈り、共に歩み、今日表明している、祈りを込めた努力を生き抜くに当たってわたしたちを支え続けてくださるよう求めます。



〈学び〉
 この声明は、カトリックとルーテルの50年にわたる対話がそれぞれの取り組みにおいて成果を積み上げてきたことの結果として産み出されたものだ。異なる二つの教派という事だけではなく、ある意味で歴史のなかで最も激しく争い、キリスト教西欧世界を二分するような結果をもたらした両教会が、こうして今、この記念の年に共同して一つの声明を現すことになったことは意義深い。
 しかし、こうしたエキュメニカルな交わり、その対話と和解、共同ということはカトリックとルーテルという二教会間だけのものではない。むしろ20世紀はエキュメニズムの世紀であるといわれるほどに、世界のキリスト教が対話を重ねて、具体的な協力関係を作ってきたし、一致に向けての成果も産み出してきた。
 1910年の世界宣教会議(エディンバラ)、1921年のIMC結成、1925年「生活と実践」委員会、1927年「信仰職制」委員会など、プロテスタント教会間での教派をこえた交わりと共同がすすみ、第二次世界大戦を経て、1948年には世界教会協議会(WCC)の発足となる。信仰職制委員会には、発足当時から実はローマ・カトリック教会からのメンバーを正式に迎えていて、教会一致のための神学的な学びを積み重ねてきたのだ。あるいはまた、19世紀から続いていたカトリック教会での典礼復興運動はプロテスタント諸教会にも影響し、礼拝についての学びと実践が教派を超えてなされていくようなことも起こっていた。そして、特筆すべきは1982年に公にされたリマ文書、BEM文書が産み出されたことだ。これは、WCCに加盟する各教派の洗礼(Baptism)、聖餐(Eucharist)、職務(Ministry)に関する神学的な違いを乗り越えていくための対話を重ね、相互理解と受容を推し進めて、ここまでは一つの理解に到達しているという収斂させた成果を公にしたものだ。そして、この理解を基にして、リマ式文なるものが作成され、教派をこえて聖餐をともにする礼拝を可能にしようという画期的な取り組みなのだ。現実にこの式文を用いての一致の礼拝をもつにはまだまだ課題が多いといわなければならないが、少なくともこうしたエキュメニカルな交わりと神学的な対話の大きな流れが20世紀のはじめから続いていたことが、カトリック教会の第二バチカン公会議、エキュメニズム教令に影響を与えたに違いないし、実際にカトリックとルーテルの対話もこうしたWCCでの取り組みということと重なっていたからこそ成果をあげることが出来たのだと言える。
 従って、この声明ではこうした多くのエキュメニズムの取り組みをしてきているキリスト教世界に対する感謝を述べ、またそうした大きな教会一致への願いを祈り続けてもらえるように願っているわけだ。そして、この宣言だけでなく、カトリックとルーテルの両教会のエキュメニズムの成果がそうした世界のキリスト教会の一致運動との深い関係のなかにおぼえられることに大きな意味があるといってよいだろう。


 

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