2016-10-28

宗教改革500年、ルーテルとカトリック「共同の祈り」

ルーテル教会とカトリック教会とが合同で宗教改革記念の礼拝、「共同の祈り」を行う。

  (ライブ中継は、次のURLで)
    http://www.lund2016.net/media/livestream/
 
宗教改革500周年を一年後に控えて、今年、2016年の10月31日にルーテル世界連盟発症の地、スウェーデンのルンド(ルンド大聖堂とマルメアリーナ)にて記念式典があり、フランシスコ教皇(カトリック教会)、ムニブ・ユナン牧師(ルーテル世界連盟議長)、そしてマーティン・ユンゲ牧師(LWF事務局長)の共同司式にてこの礼拝が行われる。
                 
                              (ルンドの大聖堂)

 両教会の合同礼拝は、1999年の同じく10月31日に『義認の教理に関する共同宣言』の調印の時に続くものだ。対話は続き、この合同の礼拝をもつために『争いから交わりへ」を公式発表し、さらに準備が重ねられてこの日を迎える。
 20世紀エキュメニズムの大きな流れが、とりわけ1964年にカトリック教会が「エキュメニズム教令」を発布して加速度的に進展してきた結果が、両教会の新しい時代を切り開く画期的な決断へとつながって、今回の合同礼拝が行われる。16世紀に宗教改革が起こり、互いの教会をアナテマを伏して断罪しあった歴史を、「和解と平和」のメッセージの中に塗り替える。この礼拝を受けて、来年の500周年は、世界中でこのメッセージを共有するようにと促されるだろう。
 日本においての企画は、間もなく公式に発表される。楽しみにしたい。
 

 

2016-10-26

Principles of Lutheran Theology 『ルター派神学の諸原理』

                   

ルター派神学の諸原則と訳したらいいだろうか。
著者は、シカゴのルーテル神学校で長く組織神学を教え、ルター派神学の牽引されたカール・ブラーテン。エキュメニズムにおいても重要な役割を果たしてきた。
そして、ロバート・ジェンソンとともにあのキリスト教教義学(Christian Dogmatics)二巻本の編集責任をとった一人だ。

初版は1983年。私の神学校時代の「ルター神学特講」の授業(たぶんこの授業名だったと思う。担当教員は石居正己。)でのテキストだった。

2007年の改訂第二版となって、以下の8つを主要な原理として論じる。

1.聖書原理
2.信条原理
3.エキュメニカル原理
4.三位一体原理
5.キリスト中心原理
6.礼典原理
7.律法と福音原理
8.二王国原理

ルター神学の特徴としてこの8つの原理を挙げ、ルター神学の歴史の中でそれぞれがどのように発展し、どのような意味を持つものとなっているのかを明らかにしたもの。そして、それらを改めて現代の脈絡のなかで問い直している。
180頁ほどのコンパクトな本だが、読み応えはあるし、ルター神学の特質についての深い学びになる。
宗教改革500年を前に、神学生にはもちろん、牧師たちに是非手にとって、学んで欲しい一冊だ。

2016-10-19

ルターの祈り

かつて(1976年)聖文舎で出されたものルター選集第一巻の復刻。
石居正己の翻訳による『ルターの祈り』(リトン社)
(ちなみに、ルター選集は、第二巻がルターの説教、第三巻がルターのことば、そして、第四巻がルターの説教2だった。)


推奨4冊には入っていないけれど、似た装丁で出版されている。というよりも、これが2010年に復刻版として出版されていたので、これにあわせるように新しい3冊の出版となったのだ。だから、実は推奨5冊??というわけではないけれども、手にとりやすく、学びやすいものだ。

ルターは祈りの人とも言われるが、彼にとって、信仰とは祈りそのものだといってよいのだ。そのルターが祈った祈りそのものが収録されている。

内容は以下のとおり

単純な祈りの仕方
魂の神との対話
礼拝の中での祈り
みことばとその務め
罪人への恵みを願って
さまざまな時の祈り

解説・ルターの祈りについて

是非、一読を。

2016-10-18

宗教改革500年記念の推奨4冊

日本福音ルーテル教会が宗教改革500年を記念して、それぞれの教会で、学校・施設でルターその人と、その信仰・神学についての学びを深めていくために推奨4冊を挙げてこの出版事業を展開している。この10月1日の『「キリスト者の自由」を読む』をもって、この4冊全ての出版が終わっている。

一冊目は、実は2012年に岩波新書として出版された徳善義和著『マルティン・ルター』だ。これは、ルターという人物を知るのにもっとも手軽で確かな書物と言ってよいだろう。岩波からの出版ということで、教会外の方にもわかりやすく、読みやすい。


以下の三冊は、ルーテル学院のルター研究所によって編まれたもので、いずれもリトン社から出版されている。それぞれにすでに手にとってくださった方もあるかと思うが、改めて紹介しておきたい。いずれも、ルターの神学、そしてルーテル教会の信仰を学ぶのに欠かすことの出来ない三冊だ。


『エンキリディオン 小教理問答』
いわゆるルターの小教理問答書。洗礼準備などでよく用いられている青もしくは黄色の表紙の薄い冊子のものは、一部掲載がなされていない部分がある。全文を訳されたものが手にとりやすくなった。エンキリディオンは必携とでもいったらよいか。私たちがキリストの福音に生かされる信仰について簡潔に教えるものだから、洗礼の時ばかりでなく、繰り返し、読み、確認するようにとルターはこれを書いている。

『アウグスブルク信仰告白』
1530年、アウグスブルクで行われた神聖ローマ帝国議会で読まれたもので、ルターの宗教改革に賛同する信仰的立場を表明したものといってよいだろう。執筆はメランヒトン。意図は、当時危険なものとされたルター派陣営の信仰的立場は、伝統的なキリスト信仰にあるものであることを表明しつつ、「信仰義認」の福音理解とそれに基づく教会・信仰者の在り方を簡潔に言い表している。

『「キリスト者の自由」を読む』
「キリスト者の自由」は、1520年後に宗教改革の三大著作といわれるようになる主要な改革的信仰を著したものが書かれるが、その中の一つだ。日本でも世界でも、おそらくルターの著作の中で『小教理問答』に続いて最も親しまれてきたものと言って間違いない。短いけれども、キリストによって生かされる信仰者の生を、非常にわかりやすく示されている。これをルター研究所の所員たちが、現代の脈絡のなかで読みながら何を学ぶことが出来るかと簡単に解説したもの。

出来れば、宗教改革500年を迎えるこのときに是非教会でも、個人でも手にとって、これらを学んでいただけるとよいと思う。

注文はアマゾンでも可能かとは思うが、できれば、お近くのキリスト教書店からお求めいただくと書店を支援することにもなる。
また、リトン社の三冊は直接出版元に注文することが出来る。教会ごとにまとめて注文いただくとよいだろう。

リトン社
電 話:045-433-5257
FAX:045-402-1426



2016-10-17

『「キリスト者の自由」を読む』

日本福音ルーテル教会の宗教改革500年を記念した特別企画、推奨4冊の最後の出版となる『「キリスト者の自由」を読む』(ルター研究所編、リトン社)が10月1日付けで出版された。

                   

 この本では、ルターの著作のなか最も多くの人に読まれ、愛されてきた『キリスト者の自由」(1520)を取り上げているが、新訳ではない。紹介したものはすでに公にされている徳善義和先生の抄訳にとどめている。この本は、むしろ、ここに著されたルターの神学的主張が何か、ルターが生きる中で何を問い、信仰の中でその答えを求めていったのかを確かめつつ、それが現代に生きる私たちにどのような意味を持っているのかという考察をまとめていったものだ。執筆は、ルター研究所所員が分担執筆を行っている。

 取り上げたテーマは
・自由
・律法と福音
・信仰義認
・全信徒祭司性
・信仰と行為
・愛の奉仕

(ちなみに、私も「全信徒祭司性」を担当させていただいた。)
加えて、信徒の方にも加わっていただいた座談会も収録している。
単に、宗教改革の記念的著作を読むということではなく、現代の社会と教会に生きる私たちを考えるうえでも、是非、これを用いて学んでいただければと思う。

ご注文は、以下の出版社に願いたい。
リトン
電 話:045-433-5257
FAX:045-402-1426

また、本文の訳と詳細な注解は徳善義和先生の『キリスト者の自由ー訳と注解』(教文館、2011)を是非お求めいただきたい。https://mishii-luther-ac.blogspot.jp/2013/09/blog-post_23.html

2016-10-14

「死とその記念」における神の祝福

『礼拝と音楽』誌の最新号(171)に表題の拙文をのせていただいた。



 ライフサイクルにおける祝福という特集のなかに取り上げていただいたものだ。
別の雑誌では連載もさせていただいてきたし、関係する書籍を出版させていただいたこともあって、死の問題、また葬儀や記念会についての学びに招かれたり、書かせていただく機会も多くなった。
 今回書かせていただいたなかでは、「祝福された死」という視点と「生きられた生への祝福」という二つの側面を意識してみた。日本的文脈のなかで大切にされてきたいわゆる「死者儀礼」を受け止めながら、キリストの福音が何を応えていくのか問いつつ、記したもの。短いものだが、是非読んでいただければと思う。