2024-02-24

第58回教職神学セミナー「キリストを伝えるーキリスト教と公共世界」




ルーテルの「教職神学セミナー」がこの2月13日、14日と4年ぶりに対面で行われた。会場はルーテル市ヶ谷センター会議室。ウイルス禍前は2泊3日はとって、ゆっくりと学びと交わりを深めたが、今回は久しぶりの対面ということで1泊2日の集中プログラムとなった。





テーマは「キリストを伝えるーキリスト教と公共世界」。

私は基調講演「ルターと公共世界」を担当させていただき、前座としてセミナー全体のイントロダクションをさせていただいた。

そして続いて、ゲストスピーカーにお招きした福嶋揚先生から特別講演「資本新世のキリスト教〜資本主義の神学」をいただいた。福嶋先生のお話は、ご自身もおっしゃっていらしたが、かなり大胆でラディカルなプレゼンテーションであったと思う。現在の資本主義世界の先をどのように私たちの未来として描いていくのかということに関わって刺激的な問題提起をいただいた。福嶋先生の講演についても改めて私なりの受け止めと感想をのちに記したい。

2日目は盛り沢山でまず李明生先生に説教者のための聖書研究ということで「隣人愛が向かう先はどこか -新約諸文書から-」で講演、また現場からということで白川道生先生に特別講演「今、ここにある公共性~教会に顕在する、公の場~」、そして最後は宮本新先生「公共世界における宣教~カサノヴァの公共宗教論を手掛かりに」という講演でまとめをしていただいた。


とりあえず、私がお話しした「ルターと公共世界」のレジュメを以下に置いておく。

大きく4つのまとまりで限定したお話をしたので、できれば今後このブログで、それぞれでお話ししたポイントをまとめ、また時間の関係で話すことができなかったことを補って私自身のこのテーマでの学びを整理しておきたいと思うが、ここではレジュメのみ。


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20240213                                                                            ルーテル 教職神学セミナー

ルターと公共世界

日本ルーテル神学校 石居基夫

1.  はじめに

(1)公共世界とは

公共(Public)⇔ 私事(Private)  近代・市民社会の形成とともに

他者と共に生きる領域 全構成員の共通の関心と課題、基本的人権、

他者性、多様性、差異性、中立性、公平性、自由、民主主義 ☞ 福祉

 

(2)神学の射程として

「公共」の神学 「公共」のために 「公共」を問う cf.稲垣

教会も信仰者も日常的に生きている基盤としての「公共世界」の問題

国家の支配、資本主義経済の世界支配(グローバリズム)による「公共」の危機

危機をもたらす「力」の持つ宗教性(偶像・マモン)を問題として

   

 

私たちの問題

(1)ルーテルの包括的宣教における「公共」

教会における伝道と共に、幼保、教育、福祉の働きを展開 

ルーテル学院←「神の民」育成、福祉・心理の対人援助へ

法人会連合各法人の将来に向けて ルーサラン・キリスト教主義とは

 

(2)公共世界に向けて

戦争と平和、宗教と国家(靖国、天皇制)←20世紀後半の課題

被災地支援、臨床宗教師、スピリチュアルケア←21世紀、とりわけ3・11以後に

原発、沖縄、多様性、生命倫理、環境倫理 

 

 

3.ルター

(1)神の二様の支配と悪魔的勢力との戦い  cf. U. ドゥフロウ

    律法:(神の左手の支配、世俗的支配、国家)

       この世の平和、正義、公平を実現する⇔  悪魔的諸力 

                         (罪、悪魔、死、律法・神の怒り)

   福音: (神の右手の支配、霊的支配、教会)   

         キリストの義が与えられ、赦しに生かされる

 

 

 

(2)神の世俗的支配における「三つの機関(秩序と立場)」 社会教説 cf. 倉松功

   国家(politia):教会(ecclesia):家政(oikonomia

   すべてのキリスト者がそれぞれの秩序に立場をもち、召命(ベルーフ)を生きる

  教会はみことばによって預言者的に参与し、また具体的な奉仕者を派遣する

 

(3)全信徒祭司と協働

   すべての信仰者が神の御業への参与・協働に生きる

   創造の業 他者と共に生きる世界、必要な物、関係 ← 「小教理問答」使徒信条

   救済の業 隣人への奉仕(ディアコニア) ← 「キリスト者の自由と奉仕」

 

 

4.近代以降の枠組みから新しいカタチを描くために

(1)近代市民社会の形成と公共 の中でのキリスト教信仰

   宗教改革以後のキリスト教的一体世界の崩壊 

  近代国家は多様な信仰の共存を内包する⇔信仰は私的領域へ

  市民革命以後の市民による「公共社会」の自覚的形成と参与

 

(2)国家と資本主義の支配

   現代における国家と地域社会の「公共性」との矛盾 

   自由と平等の相剋、格差と犠牲の必然、

   産業革命後の資本主義経済の圧倒的支配

⇔人間性疎外と自然の搾取の論理

 

(3)現代日本の中で

   19世紀敬虔主義における宗教的個人主義をいかに超克するか。

     →ドイツ敬虔主義の脈絡におけるディアコニア運動の形成の批判的検証

     (シュペーナー、フランケ、ツィンツェンドルフ、ビュルヘン

       今日のいのちと尊厳、多様性を支え、ケアする営みを

神の恵の働きの中にもう一度捉えなおす

 

創造論と終末論のただなかで、救済論を軸にしながらも、包括的神学思考をする

  Politiaoikonomiaの間に立つecclesiaの意味と可能性

  

            Cf.キリスト教自然神学の再考へ(稲垣久和、マクグラス、)

 

2024-02-17

神学校の夕べ 2023年度



今年、4年ぶりに4名の神学生が卒業していく。
それぞれに自分の人生の歩みにキリストの招きを聞き、何回も挫けそうになりながら、それでも主の霊によって導かれて、今年卒業して日本福音ルーテル教会の牧師として召されることとなった。
この2月25日の日曜日の夕方行われる「神学校の夕べ」では、卒業生たちが、それぞれにみことばに向かい合い、自分たちの心の響いている福音を会衆に伝えてくれる。
喜びと感謝を主に捧げつつ、彼らを励まし、祝いの言葉をいただければと願っている。
どうぞ、お集まりください。



 

卒業するのは、笠井春子(JELC田園調布教会出身)、河田礼生(JELC三鷹教会出身)、三浦慎里子(JELC室園教会出身)、ディビッド・ネルソン(JELC本郷教会出身)の4名。

今年、この神学校の夕べのために彼らが選んだテーマは「共に在ませ わが主よ」。

2月25日 午後4時から、日本福音ルーテル教会宣教百年記念会堂(JELC東京教会)




牧会研究会Plus「いのちにつながるコミュニケーション」

 デールパストラルセンター主催の牧会研究会は今年特別企画として、牧会研究会Plus「いのちにつながるコミュニケーション」を企画しました。

講師は三村修牧師 (日本基督教団佐渡教会牧師)です。三村先生はボセー・エキュメニカル研究所(世界教会協議会、スイス)での学びを出発点に、マーシャル・ローゼンバーグ氏により体系化された「非暴力コミュニケーション=共感的コミュニケーション」を学ばれ、この理論に基づいて、互いの「感情」や「必要」を大切にしつながりを育むコミュニケーションづくりを学ぶワークショップ、またメディエーション(仲裁)の練習と実践を、教会をはじめ各地で各世代に提供しておられます。

牧会者として、「共感的コミュニケーション」について実践的な学びができることは何よりも大きな恵みです。私たちは社会において、あるいは教会の交わりや家族の中にあっても、さまざまに痛みと緊張のある関係を経験しています。このワークショップを通して、自分自身の深い思いや相手の中に隠された感情に気づき、自分自身を改めて省み、他者との本当の出会いへと開かれていくことでしょう。何よりも私たちがともに神に愛された存在(いのち)として、お互いに喜びを分かち合うようにと召されていることに気付かされることでしょう。

このプログラムは以下の3回のシリーズです。そのうちの初めの2回はデールパストラルセンターの通常の牧会研究会の第2回と3回の講座として開かれているものです。このPlusのみの参加も可能ですし、通常の牧会研究会に加えた一泊の研修として参加いただくこともできます。


510()1330-1530(オンライン) いのちにつながるコミュニケーション①

614()1330-1530(オンライン) いのちにつながるコミュニケーション②

826()1330~ 27()1530 (一泊2日の対面)    

                      いのちにつながるコミュニケーション③

                                -和解の出来事に仕える

問い合わせ、お申し込みについては

日本ルーテル神学校附属研究所デール・パストラル・センター(E-mail:  dpc@luther.ac.jp )

にお願いいたします。




【対象者】教派にかかわらず各教会教職者、聖職者


【定員】20


【受講方法・費用】(下記費用にはワークショップに伴う宿泊・食費は含まれません)

 1. 以下の3つのパターンからお選びください。

 A.  年間10回の牧会研究会 オンライン講座のみを受講:¥20,000

 B.  Aに加えて牧会研究会Plusを受講:¥25,000

 C.  オンライン5月・6月とPlusのみを受講:¥9,000


 2.デール・パストラル・センター事務局までE-mailにて以下を記してお申込みください。

  受講パターン(ABC)、②お名前(ふりがな)、③教会名・教職位、

④ご住所、⑤E-mailアドレス、⑥連絡用のお電話番号

いただいた個人情報は厳重に管理し、研究会および今後のDPCからのご連絡にのみ使用します。


【申込期日】

315日(金) 

牧会研究会 2024

 今年も日本ルーテル神学校付属のデールパストラルセンターは、牧師を中心とした牧会の任をもつ方々のために牧会研究会を開催します。今年は牧会者である私たち自身を振り返り、また霊的な務めに召される中での自身の養いに向けたテーマで企画しています。




ポストコロナということで、昨年は全10回を対面にて行いましたが、遠隔地にある方々にはご参加いただけず、多くの方にハイブリッドでの開催についても問い合わせをいただきました。しかし、現実的には対面とオンラインを混在させることに技術的困難があり、今年の牧会研究会開催についてはオンラインのみの開催といたしました。以下のような講師による、全10回のプログラムです。どうぞ、ご参加くださいますように。

しかし、同時に対面でのかけがえのない学びを実現したいという思いもあり、牧会研究会Plusという対面でのプログラムを合わせてご紹介しています。上の10回と合わせての申し込みもいただけますし、また、このPlusの企画として2回のオンラインと一泊の対面での研修会として独立したプログラムとしてもご参加もいただけます。この牧会研究会Plusは、別にご案内いたしますので、そちらをご覧ください。

いずれも、問い合わせ、お申し込みについては

日本ルーテル神学校附属研究所デール・パストラル・センター(E-mail:  dpc@luther.ac.jp )

お願いいたします。

【講師】  成 成鍾 (日本聖公会東京教区司祭

      三村 修  (日本基督教団牧師)

      関野 和寛(DPC所員)

      石居 基夫(ルーテル学院大学学長、DPC所員)

      ジェーム・サック(日本ルーテル神学校教授、DPC所員)

 

【年間予定】各回13:30-15:30オンラインZoom

1回  412日  牧師のセルフケア  (ジェームス・サック)

2回  510日  いのちにつながるコミュニケーション①  (三村修)

3回  614日  いのちにつながるコミュニケーション②  (三村修)

4回  712日  クリスチャンでない人々の看取り  (関野和寛)

5回  913日  牧会者の心  (石居基夫)

6回 1011日  牧会者と霊性修練Ⅰ‐準備過程  (成成鍾)

7回 11月 8日  若手・新人牧師に必要な防衛-教会内批判者論理から  (関野和寛)

8回  110日  牧会者と霊性修練Ⅱ‐理論と実践  (成成鍾)

9回  214日  聖人君子からの脱却-インターナルシステム理論  (関野和寛)

10回 314日  牧会者と霊的同伴  (成成鍾)




【対象者】教派にかかわらず各教会教職者、聖職者


【定員】20


【受講方法・費用】(下記費用にはワークショップに伴う宿泊・食費は含まれません)

 1. 以下の3つのパターンからお選びください。

 A.  年間10回のオンライン講座のみを受講:¥20,000

 B.  Aに加えてPlusを受講:¥25,000

 C.  オンライン5月・6月とPlusを受講:¥9,000


 2.デール・パストラル・センター事務局までE-mailにて以下を記してお申込みください。

  受講パターン(ABC)、②お名前(ふりがな)、③教会名・教職位、

④ご住所、⑤E-mailアドレス、⑥連絡用のお電話番号

いただいた個人情報は厳重に管理し、研究会および今後のDPCからのご連絡にのみ使用します。


申込期日】

315日(金)