パウル・ティリッヒの三つの説教集のうち最後に出版されたもの。出版後、比較的早く日本にも翻訳が紹介されたものだ。
永遠の今 (1965年) (新教新書)
永遠の今
パウル・ティリッヒは、組織神学三巻の著作をもって、やや難解な存在論的な神学を展開したことで知られる。その哲学的な言葉遣いは、おそらく関心を持つ私たちの気持ちを萎えさせるかも知れない。しかし、彼の神学は、私たち人間の生きる状況を深く掘り下げ、本来あるべき姿と実際の姿の差異を本質に対する実存の窮境であると見定めながら、そこに問われると問いに聖書のメッセージがどのように答えているのかを深く尋ねる。その相互の関係を「相関の方法」と呼び、新しい神学の形を提示したのだ。
19世紀自由神学の流れと新しい20世紀の神学的な営為を結びつけようとしたと言ってよいだろうか。シュライアマッハ以来のキリスト教を人間の宗教性の中に位置づけ、意味付けなら、合理主義・理性主義の近代の流れなかで信仰の価値を求めて来たあり方に対して、K・バルトはその欺瞞と人間に対する楽観主義に反対し、神のことばに出発点を置く神学を改めて掲げた。おそらくティリッヒは、そうした歴史の流れをふまえつつも、人間が本当に神のメッセージの前に立つということが起こるためには、メッセージを受け取る私たちのなかに、本当にそのメッセージが必要であるということを掘り下げておく必要があるし、また、必ずその答えを求める人間実存があることを捉えていなければメッセージは届かないという問題意識が彼独特の神学を形成させている。
今、21世紀を迎えた私たち、改めて、この「相関の方法」を深く学ぶ必要があると思う。難解な神学という印象だが、じっくりと説教集を読むことで、深く教えられることがある。既に絶版だが、古本で手に入れたい。神学生は必読。
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