日本人としてキリスト教を信仰する。そこでどんな問題に出逢っているのか。信徒にとって切実な課題を信仰の道筋の中で考える。日本の神学の世界は、どうしても西欧の神学の翻訳的な取り組みから抜け出せないところが多い。
隅谷氏の取り組みは意味深い。
第一部は、日本人とキリスト教という少し大きい視点から、10編ほどのエッセイがまとめられている。日本人がどういう宗教性をもっているか、またそういう日本人がどのようにキリスト教と出逢い、その信仰にどんな日本的な特徴が見られるのか、そうした問題に向き合って、歴史的なことから現代の問題にまでわたって自由に語り出される。
第二部も、〈日本の信徒〉の「神学」というタイトルで括られたやや短めの10編のエッセイをまとめている。視点は「信徒」が信仰を持って生きるその日常生活、具体的な生きられる信仰の姿に絞られた問題意識を語られる。信徒がどういう問題に出逢っているのか、そこでどんな風に信仰をいきるのか。生きるべきか。社会学的な分析の視点をもって、今日の日本の教会と神学に問題提起を行っている。
「神学」というものが生きられる信仰に奉仕するべきものとするなら、こうした「信徒」の視点は何よりも大切であるし、また「神学」が決して専門家集団の役に立つのかどうか分からないように難しい議論だけに終始するものであってはならないということを知らされる。
神学生は必読の書の一冊。
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