神学生の時、信仰の課題、神学問題の要は「キリスト論」だと考えたことがある。結局、私たちの信仰は、あの人間イエスを「キリスト」と告白するという奇跡の中に、すべての秘儀があるのだという直観だった。しかし、その後その直観を確かな言葉をもって紡ぐことが出来ていない。それは、自分の生涯の課題かとも思う。
さて、神学生の時に課題図書として紹介された本の一つにペールマンの『ナザレのイエスとは誰か』がある。ペールマンが神学生のゼミで学生に取り組ませるための資料としてまとめたものだろう。いわゆるキリスト教神学におけるキリスト理解の叙述を展開するというものではなくて、キリスト教以外、ユダヤ教の視点、無神論者の視点、哲学者の視点などからイエスがどのように捉えられているのかという具体的な資料を提示し、それを読んでどう考えるのか、と読者自身に問いかけるような設定になっている。もちろん、ペールマンなりの分析と見解も短く添えられているのだけれど、それは、「イエスはこう理解されるべき」という教義的な教えではなくて、こういう考え・捉え方があるが、その理解に収まり得るかと、反語的に問いかけていくような叙述だ。
神学生には是非読んで、考えてほしい一冊。
改訂された新版『イエスとは誰か?』には、遠藤周作も取り上げられている。この項にはいささか食い足りない感じが否めなかったが、しかし、海外に遠藤がこのように知られているということには、なかなか考えさせられるところがある。その意味でもこの新版を手にしてもらっても良いだろう。
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