神学生の必読書として。
マルコ研究で著名な田川健三氏によるイエス研究。聖書学者としての類いない研究熱が、氏の極めて強い個性によって一つの形をとったイエス理解の本。
おそらく、教会ではなかなか聞くことのないメッセージを聞くことになる。
時代、地域、社会のなかに生きた人間イエスを探求しながら、そこでイエスが何をして、何を求め、また何を語ったのかということを浮き彫りにする。聖書学の最新の成果というよりも、田川氏自身の緻密な聖書学的研究の成果を示していると言ってよい。加えて、氏の独自の視点が貫かれた筆遣いは、ユダヤ階級社会の体制に対する逆説的反抗者としてイエス像を描き出し、キリスト教によって著しく神格化したイエス像を糾弾する勢いだ。そうして、イエスの「生」そのものを描き出すことで、本当のイエスとの出逢いの意味を受け取ることができると考えているのだろう。
独自の視点をどう評価するかは、人それぞれだろう。しかし、キリスト教への徹底した批判的視点を、どのように受け止めるのか。神学生なら、必ず読んで考えるべき書物の一つ。「これ、チャント読んだ?」の質問に、どう応えるか。そこが、もっとも大切なポイント。もちろん、キリスト教を批判するのみで、自ら田川とともにイエス教?、もしくは田川教を自称するなどということになるのなら、なにをか言わんやということだが…
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