09年に出版され、話題になった小説が、映画化されて公開になった。
ちょうどこの本の出版の前年に、天童氏の『悼む人』が直木賞を受賞している。「死」の問題がかたちを変えてとりあげられた小説だったのですぐに気になったが、飛びつくのはミーハーにすぎるかと、棚に戻したものだった。映画化決定を見過ごしていたが、公開が近づいてにわかに新聞などにもとりあげられて、思い出した。あわてて、先週本屋に行って手に入れたが、著者の夏川草介氏は本当のお医者さん。
医療の現場では、医者は病気を治し、患者は元気なることが期待されるけれど、現実には、それがかなわないことも多い。実際に、今、人が亡くなるなる時は、ほとんど病院という場所で最期を迎えるのだから、医者が患者を一人の人として看取るということは病院であっても日常的なことかと思う。けれど、改めて現場の医師の書かれたものから、そうではないということが分かる。大学病院は、けっして看取ってはくれないのだ。医者が、一人の患者に向かい合うということは希有なことなのだ。
だからこそ、こうした人間らしい医師の働く場所。その心の声が改めて一つの小説となる。
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