今年の大学の学園祭に、ひさしぶりに外部からのアーティストを招いてのコンサートが開かれた。どんなアーティスト?って、アイドルだという。生ハムとサラダじゃなくって、「生ハムと焼うどん」。ほかに、「ハッカドロップス」と「IRIS」も出演。
えっ!と驚いたのはマルチコート前の行列。学生やその保護者、はたまた大学近辺の一般の方とは明らかに様子の違う面々が、午後の1時半からのステージのために、朝の十時過ぎくらいから少しずつ集まってきた。お昼になる頃には、長い列を作っていた。
ああ、これはステージのためか〜。プロのアーティストを呼ぶってことは、こういうことなのね…くらいに思っていただけなのに。
しばらくすると、うちのチャプレンがチケットを5枚手にしてやってきて、これ、先生もいかないかと、私のことを誘うではありませんか。いやいや、どんなかな〜と思っていたけれど、自分がその席にすわるなど思いもしないことだったので、ん〜〜〜っと思ったものの、まあ、そういうのも面白いかなと。1時20分に待ち合わせ。
しばらく用事をしてから、約束の時間にマルチコート前にくるとすでに行列は皆会場に入って準備万端。そっと、5人で場所を確認、席についた。
はじまる。ハッカドロップスがギターを弾きながら歌い上げていく。ん〜?これは演歌か、と思うべく昭和の歌謡曲のような楽曲は、50代後半の耳には心地よい懐かしさでこころを満たしてくれた。
続くIRISはマレーシアの女の子。日テレ系のあるバラ番で「NIPPONの優しき旅」というコーナーがあり、それに出演していたというので思い出した。とにかく、一生懸命と明るさと、けなげさが歌声にのって心に優しい。ん〜。いいね〜。
で、いよいよ「生ハムと焼うどん」の登場。いきなり、会場の雰囲気が変わる。いつの間にか上着をとってオレンジのTシャツが会場いっぱいにいるのだ。あれっ、そんなだった?皆さん、これをまっていたのか〜。そうだったのか。会場は指定席なので、前から後ろまでまんべんなく散らばっているが、あの行列はまさにこの二人のJKアイドルの「追っかけ」?ああ、これがいわゆる「おたく」ともいわれるような方々? ふたりが歌うのに、見事に「あいの手」をいれ、声をあげ、お決まりの振り付けで一斉に応える。ワ〜。えらいものを目撃している。
公式HPは以下のとおり。
http://namaudon.tokyo/
しかし、上手い。東と西井ンパネ〜ってやつだ。
古い言い方だけれどコント仕立てで舞台が見事に演出されていて楽曲を盛り上げる。ちょっと下ねただけれど、嘘がないホンネトークを軽快に演じてみせる。女の子の「裏側のホンネ」みたいなものをわ〜といっちゃうから、聞いている者は、笑いながら自分たちのこころの何かをデトックスするのだろうか。
ドリフの「8時だよ」的なお定まりを思わせるけど、それよりも高校の文化祭的な「のり」を会場はみな了解済みで、お約束によってこれをサポートする。もちろん、恥ずかしがることも悪びれることもないストレートで元気いっぱいな二人は会場と一体になって自分のなすべき役を見事に演じてみせてくれる。途中で、会場からお客をも舞台にあげて、それなりにイジリ、ちょっとディスっても楽しませる。
走り回り、座席を舞台に変えて盛り上げると、波打つ会場。あ〜、見ているというか、この会場に居ればもはやみなで作る舞台なのだ。
この一体感か。なるほど、いい歳をしたおじさんもおばさんも、「アイドル」に夢中になるというのがわかる。わかってしまう。
あぁ、最初に会場が動き出した時は「わ〜、ひく〜」と思っていたはずが、まずい、心がどんどんもっていかれちゃうのだな、これが…。応援したくもなる。
二人がいなけりゃ成り立たないけれど、むしろ、会場のみんながいなけりゃ成り立たないということでもある。そうして生まれていくこの異空間にみんなが一つの時間を描き出す。だから、集まった者たちに満足感、達成感を与えるのだ。もう一度、経験したいと、思うだろうね。これは・・・。そうして「追っかけ」にもなるだろう。「次は、どこでやるの?」「またいこう!」と思わせる。
高校を今年卒業したばかりでしょう?これだけの台本を作り上げて、自ら演じ、全てをセルフプロデュースのエンタメ力はすごい。
そして、ふっと心をもっていかれるのはなぜかと…。現代のストレス社会の中で管理され、自分らしさよりも成果を求められ、居場所を見出せなくなる私たちが、その心のひとときの存在感をこの一体感の中に見出すものなのかも知れない…と思ったりしている。だから、きっとその要素は誰の心にもすでに潜んでいるということか。無縁だなどと思い込んでいるほどに遠い存在ではないことは間違いない。
というわけで、この体験は私にとって、非常に貴重な「アイドル体験」となったわけだ。
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