「人間・いのち・世界」の授業では、いろいろな素材を用いて、「いのち」や「人間」について考えてきた。その中で取り上げた絵本が「100万回生きたねこ」であった。いろいろな飼い主のもとで、いろいろな猫として100万回も生きてきた猫が、はじめて生き返ることなくそのいのちを終えていくことになった。それは、いったいなぜなのか。学生からもらうリフレクションでは、本当にさまざまな意見が寄せられた。
初めて、この猫は「誰の猫でもなく、自分自身であった」から、とか、「自分を大好きだったこの猫が自分の納得いく生き方を初めて見いだした」からとか、「白い猫」を愛した猫がもう新しい猫になる必要がなくなったからだとか。もちろん、正解はない。
この作品を通して、私たちは生きるということの深いふかい問いを自らに問う。そこから、たったひとつの答えを自分のことばとして紡ぎだすことが大切なのだ。
突然の佐野洋子さんの死去のニュース。
返信削除百万回も生きて、またよい作品をと望みたくもあるけれども、自分を愛して、そのうえ人を愛し、沢山の涙を流してもこられただろう彼女は、たった一つのいのちを生きて、この生涯を終えられたことだろう。
しかし、何度も繰り返されることのないたった一つのいのちを生きられた佐野さんが生み出したものは、何度も繰り返し読み継がれて、多くの人々の心に語りかけ、いつまでも生きるものとなる。
私たちが「生きる」ということに深い思いを寄せるとき、「百万回・・」がメッセージをもって迫ってくる。佐野さんに感謝の思いを新たにしている。
佐野さんのために祈りたい。