キリスト教学科では来年度から「いのち学」を提唱し、関連科目を整理して、カリキュラムを整えることとした。「キリスト教学」という広い学問領域の中に新しい道筋をつけて、研究活動と教育を新たに展開していくことをねらいとしている。
1980年代ごろから90年代にかけて、ホスピスや終末期医療、あるいは脳死と臓器移植など最先端の医療の現場で向かい合う「死」の問題が多く論じられるようになり、それと同時に日本人の死生観ということに注目が集まるようになった。それから、五木寛之の「大河の一滴」がベストセラーになったり、「葉っぱのフレディー」という絵本がとりあげられたり、最近では「千の風になって」という歌が多くの人々の心に、それとなく自分たちの「死」や「死後の問題」について考えるきっかけを与えたといってよい。昨年(08年)の直木賞作品『悼む人』、また米アカデミー賞の外国語映画賞受賞の「おくりびと」なども、現代の「生と死」に対する深い問いが作品のテーマになっている。いずれも、日常的な人間の「死」を受け止めてきた伝統的な共同社会が崩壊した現代社会の孤独な私たちが、新しく「死」の問題に向かい合いながら、生きることを問い直す深い求めが潜在的な主題であることを考えさせられるものだ。つまり、「死といのち」について問い直したいというニーズが非常に高くなってきているということだと思う。
従来なら、いわゆる「宗教」がこうした問題に対する答えを提示してきた。しかし、具体的な宗教世界に入るのとは違った形で、「死といのち」を問うていきたいという現代のニーズがあることは確かといえよう。
こうした二ーズに対して、私たちは、「キリスト教学科」こそが、これに応えていく材料も力も、責任もあるのではないかという自覚を新たにし、「いのち学」の新しいカリキュラムを提供することにした。
すでに開講されていた関連科目に加え、新たにいくつかの科目を用意し、次のような科目を開講する。
①「人間・いのち・世界I」石居
②「人間・いのち・世界II」石居
③「いのち学序説」石居
④「食といのちと環境I」上村
⑤「食といのちと環境II」上村
⑥「キリスト教と生命倫理」江藤
⑦「キリスト教と環境倫理」江藤
⑧「福音書におけるいのち」ブランキー
⑨「いのちのキリスト教史」マッケンジー
⑩「キリスト教倫理I」江藤
⑪「キリスト教倫理II」江藤
⑫「神化の教理と永遠の命」鈴木
⑬「スピリチュアリティーと聖書の伝統」江藤
⑭「死生学I」石居
⑮「死生学II」石居
隔年開講等も含めてこの15科目ほどをまず用意できるとよいと考えている。
このテーマを神学諸科のインターディシプリナリな取り組みの中で、さらに研究をすすめ、プログラムとして提供していきたい。
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