2017-05-07

ルターとエキュメニズムの前進

 日本福音ルーテル教会・東教区宣教ビジョンセンターは、今年宗教改革500年を記念して、テーマ「ルター、その光と影」を掲げて毎月一回ずつ全10回の講演を企画した。その第三回目に、担当が与えられた。「何か話して」と依頼され、「なんでもします」と応えたものの、なかなか準備の時間もなかろうと、今年のローマ・カトリックとの企画について話してくれたらいいからと、お題を頂戴した。


 ここ数年、日本福音ルーテル教会とローマ・カトリック教会とのエキュメニズム委員を担当し続けてきたので、今、日本で取り組まれているカトリックとルーテルの対話とその成果についてお話しするには、材料に事欠かないし、今年の秋の大きな共同の記念企画には、はじめから関わってきているので、その取り組みの進展をお分かちできることは、秋に向けて、絶好の好機となる。
 気軽に受けていたが、いざ、改めてお題を見て、唸る。

「ルターとエキュメニズムの前進」

さすがに、このテーマには準備が必要だ。ルターが今日のエキュメニズムの進展ということにどのような関係があるのか。ルターは、むしろ教会に分裂をもたらしたのではないかという「汚名」まで着せられるのではないか。エキュメニズムの進展とは20世紀の産物であって、ルターその人との「直接の関係」はない。

しかし、問題はそこから先にある。ルターこそ、今日のエキュメニズムの原則を示したのではないか。宗教改革とは何かということを問えば問うほど、実はエキュメニズムとの関係に示唆を与えられるのだ。

ルターに学ぶものは、ルーテル教会を形成するのではなく、「一つの、聖なる、公同の、使徒的教会」を絶えず歴史の中に問い直すものとなるべきなのだ。
そのこころは…

明日の発表の後にここにもアップしたい。




1 件のコメント:

  1. 2017年 東教区宣教ビジョンセンター             2017・5・8
    「宗教改革500年:ルター、その光と影」
    第3回 ルターとエキュメニズムの前進
    担当:石居基夫
    1.問題の所在
     宗教改革500年を迎えて「祝い」(celebrate)か「記念」(commemorate)か。
     プロテスタント的アイデンティティの確認なのか。
     真実な教会改革は、教会一致運動とどのように関わるのか。
     ルターは教会一致に何をもたらしたのか。

    2.宗教改革と教会分裂
    (1)ルターの教会改革の呼びかけ
       贖宥状の有効性:イエス・キリストの福音が曇らされていないか
       問題は中世スコラ神学と実践における功績主義的敬虔

    (2)一修道士の破門と帝国議会
       教皇レオ10世からの破門
       神聖ローマ帝国のカール5世 帝国追放
       中世末の脱中央集権・地方の力 

    (3)アウグスブルク信仰告白とトリエント公会議
       帝国内における融和と一致への思い   
       教理的対立?:政治的・民族的な対立も?

     教会分裂:西欧のキリスト教的一体世界(Corpus Christianum)の崩壊

    3.20世紀のエキュメニズムの進展
    (1)世界宣教会議(1910)からWCC(1947〜)
       プロテスタントの教会間の一致
       「信仰と職制」にはカトリックも正式メンバーとして 

    (2)第二バチカン公会議
       カトリック教会の積極的なエキュメニズム方策
       実質的に大きな進展:リマ文書・式文(1982)

    (3)エキュメニズム冬の時代に
       マルチラテラルからバイラテラルな対話へ
       具体的な地域レベルでの対話

    4.ルター神学から
    (1)前提としての教会論
       信徒の集まり、福音の説教と聖礼典の正しい執行 
       アウグスティヌス的「見える教会」と「見えない教会」の二重性

    (2)みことばとサクラメントの中心性
       神の働き:絶えず新たな働きが終末に向かって
       歴史の中におけるいかなる真理主張も相対化される  

    (3)聖書主義   
       具体的指標として、聖書から学ぶこと。
       教会の諸伝統(含:神学)は絶えず聖書によって問い直される
       歴史的文書として 解釈原理はキリストの十字架と復活に!

    (4)キリストのからだとしての教会
       全信徒が祭司であり、教会である:
       キリストにあって一つ、異なる部分も弱いところも必要とされている
       「一つの、聖なる、公同の、使徒的教会」

    5.ルーテルとカトリックの50年間の対話
    第二バチカン公会議を受けて:
    (1)第一期(1967〜72):  
       福音理解の確認1972の「福音と教会(マルタレポート)」。

    (2)第二期(1973〜84):
       聖餐、一人のキリストのもとにあること、教会の職務

    (3)第三期(1986〜1993):
       「教会と義認」をテーマに対話を重ねる。

    (4)第四期(1995〜2006):
       1999年「義認の教理に関する共同宣言」
       2006年「教会の使徒性」を成果とする。

    (5)第五期(2009〜):
       2017年を迎えるための準備。 2013年「争いから交わりへ」出版

    6.エキュメニズムの進展 ルーテル教会とローマ・カトリック教会の実際
     改めて宗教改革500年の記念とは
    (1)2016年10月31日 「共同声明」
       福音宣教の目的、歴史に対する責任、福音理解と教会の過去について 
       「見える一致」のしるし、聖餐を共にすることを目指して

    (2)教会の一致:(神の)世界の一致のための象徴
       世界の平和
       被造世界全体への奉仕
       
    (3)日本の教会の貢献
       11・23 長崎浦上教会での企画 シンポジウムと合同礼拝
       両教会の対話と日本のエキュメニズムの土壌
       「平和」をテーマに

    (4)新たな課題の前で
       ①諸宗教との関係/(キリスト中心性)
       ②教派の中での対立/セクシャリティの問題(聖書の解釈と実践)  

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