キリスト教的視点に立って「いのちと死」について学んでみたいという人には、必読の書。
内容は二部構成で、前半第I部が「キリスト教死生学」、後半は「福祉の神学」についてと二つのテーマを深めているわけだが、どちらも神学的な人間理解のうえに成り立っている。
「キリスト教死生学」では、石原謙、金子勇男を手がかりにしながら、ルターの「死の理解」に深く学び、キリスト教における「死」の問題を教義学的に学ぶ試論に始まり、しかし、同時に現代の「心の病」の問題や生命倫理、あるいは「ターミナルケア」の課題など実践的にも深くまた幅広く考察されている。熊澤先生本人が病床にあって書かれたエッセイも含まれていて、人生の大問題としての「死」と向かい合う信仰者としてのまなざしに学ぶべきは多い。特に、「罪」と「死」の関係、また、その救いとしての十字架と神の愛について語られる言葉は、紋切り型の叙述ではなく、「いま、神学する」ということの意味を深く受け止めさせてもらえる。
「福祉の神学」は、長年の「ディアコニア」研究に裏打ちされた叙述で、キリスト教社会福祉とは、何かということを深く教える。「愛のボディーランゲージ」や「救いのパントマイム」といった表現のなかで、「福祉」が信仰に生かされた者が人間として共に生きる喜びを分かち合い、他者に奉仕する務めと理解される。さらに言えば、社会のなかで弱い存在は、その弱さ故に「宝」であり、人間世界を「競争社会」から「共存社会」へと変える特別な役割と価値を与えられ、祝福されていると論じる。
キリスト者として、「福祉」に生きることの基本を教えられる。
(書きかけのままにしてあったもの、書きあげて、公開しました。2013.9.05)
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