2017-10-20

ルンドからナガサキへ

  宗教改革500年 ルーテル・カトリックによる共同記念

     「平和を実現する人は幸い」について





【新しいことばを】
 宗教改革五百年を迎えた今年、世界中いたるところでそれを記念する行事が催されているが、なかでもルーテル教会とカトリック教会の合同の記念は、特別な意味を持っているといってよいだろう。16世紀には分裂して、互いに断罪し、争う関係となった両教会が、時を得て、この歴史を受け止めつつ、未来に向かう一致と共同を示しているのだ。『争いから交わりへ』。このテーマこそ、五百年目にして歴史を語り直すための新しいことばとなった。
 昨年10月31日にスウェーデンのルンドで行われた「共同の祈り」の礼拝は、カトリックのフランシスコ教皇とムニブ・ユナンLWF議長による司式で行われ、今年の記念の意味が示されたのだった。第二バチカン以後50年かけた対話の成果が、新しい時代を作るものとなるように、キリスト教会の全体の一致への道筋を示したのと同時に、世界に対するキリスト教宣教の使命を受け取っていく礼拝であった。





【日本での取り組み】
 日本福音ルーテル教会と日本のカトリック教会は1984年から30年以上にわたる対話を重ね、神学的な相互理解を深めながら、洗礼の相互承認、共同での出版事業や礼拝などを実現してきた歴史をもつ。だからこそ、この宗教改革五百年も特別の意味あるものとしようと、数年前から準備を重ねて計画してきたのだ。「平和を実現する人は幸い」。これをテーマとして、今年11月23日に長崎は浦上天主堂にて、宗教改革500年の共同記念を行う。ルーテル側は教会の総会で、カトリックは司教協議会での決定を踏まえているので、この共同記念にはそれだけの重みがある。そして、これは単なる教会間の交わりの回復の喜びを超えて、今の世界と歴史のなかに両教会がキリストの教会として確かなメッセージを示していくことを目指しているのだ。対立から交わり、そして神と共にある共同・協働へという歩みそのものが、現代の世界に一つのメッセージになっていくと信じたい。

【時代の苦悩に応えて】
 現代世界は、一方には国と国、人々と人々が対立し、宗教的主張と対立を巻き込むようにして争い、殺し合う現実がある。また他方では、人間の文明が被造世界に大きな破壊と危機をもたらしているという現実もある。キリストの福音は、この世界の現実の只中に神の国の実現を告げ知らせる。そして、同時に、その恵みに応えていく人々の働きを産み出していく。唯一の戦争被爆国であり、世界中の注目と支援を集めることとなった東日本の震災と原発事故を経験した日本にあるからこそ、世界に向けて確かな福音の証しと平和への執り成しを祈る意味があるだろう。被造物全体の救いが求められ、キリストの教会はそのための使命をいただいている。
 16世紀の宗教改革は、時代の苦悩に対する福音の深い洞察とまた確かな信頼、そしてその宣教を教会のなかに呼び覚ますものだったといえよう。現代の中で、私たちが教派を超えて結び合うことを、この脈絡のなかに捉えたいのだ。





【ナガサキから】
 浦上は、奇しくも今年あの浦上四番崩れから150年の時を迎えている。キリシタン迫害の歴史には、人間の権力が霊的存在としての人間の魂に対する暴力が刻まれている。長崎では、それでも信仰は重ねられてきた。生きられた信仰がある。その「ナガサキ」が、しかし今度は、帝国主義にかられた国家のもたらした戦争の悲劇のなかで再び被曝を経験することとなったのだ。
 今年、ここにカトリック、ルーテルの信仰者が共に集い、私たちの歴史に深く心を置き、それにも拘らず主の恵みの導きがあったことを知り、共に神の平和の宣教のために祈りを合わせる。
 宗教改革500年は、単なるお祭りではない。この共同記念は神の出来事の一つの証しになると信じたい。私たち自身が、教派を超えてキリストに生きるものとして、その神のみ業に与りまた、その証人となる。
                   (ルター研究所発行「ルター新聞」69号より)

How to join
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